欧米旅行者の手配行動

9月の英国出張の際、ブリストルにある日本スペシャリストのツアーオペレーターのオフィスを訪ねた。英国から日本への送客数では最大だ。プロダクト開発の責任者と会ったのだが、開口一番、「何故、こうも日本の地方の情報は少なく、手配もしにくいのか」と言われた。

2018年英国で行われた調査で、人気のあるロングホールディスティネーションに日本が第7位となった。アジアトップのタイに並び、人気度の示す上で1つの基準となっていたドバイを超えた。東京・京都以外の地方への関心の高まりもあり行程に組み入れていきたいのだが、一方で送客に必要な情報が極めて乏しく、パッケージを組むにしても、テーラーメードで手配するにしても商品化が難しいということだった。

我々、地方のマーケティングを担う者としては、耳の痛い話だ。

また、こんなデータもある。米国のある州に英国から訪れる個人旅行客の約4割が旅行会社経由となっている。身近で言語の問題もない米国でさえ旅行会社を使うのだ。言語も距離においてもハードルの高い日本旅行の実態は、想像に難くない。日本で行われる調査では、OTAによるダイレクトブッキングが大半ということになっている。これは海外では多い「個人旅行手配をWEBで受けつける旅行会社」とOTAを区分せずに、手配方法の選択肢を「WEB」で一括りにしている結果だと思われる。

流通強化のための旅行会社対策

この2つのことから言えることは、特にロングホールとなる欧米旅行者をターゲットする場合、コンシューマー対策も重要だが、旅行会社へのエデュケーションなどの流通対策が非常に重要だということだ。つまり、マーケティングの基本要素である4P(Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(情報発信))における「Place(流通)」に関する対策を講じなければ、日本の地方の旅という「新しい商品」は消費者に届くようにはならないのである。

日本国内の大きな課題の1つはここにある。

流通させるための施策である旅行会社へのエデュケーションなどが、PRや雑誌への広告出稿などのプロモーションと一括にされている上に、極めて疎かになっているのである。海外では、流通対策は「Travel Trade(トラベルトレード)」と言われ、プロモーションと区別されているだけでなく、デスティネーションマーケティングの主要な取組として位置付けられている。

2020年に向け日本の認知は益々高まる。政府機関も圧倒的物量で日本の認知を獲得しにいくであろう。その高まる認知をテコに地方への来訪を促すためには、「トラベルトレード」が欠かせない。認知施策だけでは、地方まで辿りつけないのである。

磨き上げたコンテンツは、流通してこそ、旅行者に届く形になってこそ、価値がある。地方で開発が進む様々なアクティビティやサービスを活かしていくためにも、マーケティングのセオリーに則った世界水準のデスティネーションマーケティングに取り組むべきだと思う。