デジタルは不可欠
デスティネーションマーケティングにおいて、デジタルの活用は欠かせない。海外の多くの政府観光局やDMOにおいて、プロモーション予算の過半をデジタルに投下しているというレポートもある。国内でも政府観光局を始めとしてDMOや自治体において、デジタルの活用が急速に浸透しつつある。
一方、こうした相談が増えている。「外国人観光客を対象に動画などを用いたデジタルマーケティング行ったが、観光客数の増加につながっているのかわからない。このため今後の事業予算の確保に苦慮している。」
動画プロモーションだけでは不十分
このようなケースは、「成果が現れるまでに要する時間やプロセス」と「結果の評価方法」が、予め関係者で確認されないまま事業を実施していることが多い。
米国政府観光局が用いるトラベルライフサイクルを用いて考えてみる。
旅行者は、Dream(認知)→Consider(検討)→Activate(予約)→Travel(来訪)→Share(共有)というフェーズを遷移するのだが、認知した旅行者のうち、来訪にまで至るのはごく僅かとなる。しかし、当然ながら認知がなければ来訪しない。より多くの認知を獲得し来訪まで遷移させていく。デスティネーションマーケティングとは突き詰めればこういうことになる。このため、地域の魅力を動画などに凝縮し、広告費を支払い配信することで、認知度や来訪意向の向上を狙うことは理にかなった活動と言える。
しかし、旅行という消費行動は、認知から購入(来訪)までの期間が長い上にプロセスも単純ではない。費用も時間も要するロングホールになればなおさらだ。欧州の旅行者が、数年越しの希望が叶ってようやく来日できたという話も珍しくない。またOTAを利用した個人手配のFITが増えているものの、海外ではFITのうち40%近くが旅行会社に手配を依頼しているというデータもある。海外ではWEBによる個人手配が可能な旅行会社が多く、日本ではこれらがOTAによるダイレクトブッキング層と混同されている。BtoCの認知施策だけでは簡単に来訪者は増やせないのは、こうした背景もある。
成果をあらかじめ合意しておくこと
このため、デジタルの実施にあたっては、目的を明確にし、成果を測るKPIを予め関係者で合意しておくことが欠かせない。目的を認知獲得に絞り、動画再生数や広告の表示回数などをKPIにする。この場合は、よくありがちな「この動画の視聴者のうちどれだけが来訪したのか」と言った議論せず、認知数にのみ焦点を当てる。一方で、ファネルの底に近い部分、すなわち予約行動に直結するようなところでデジタルを使うのも良いだろう。予約件数をKPIにすればよく、デジタルの成果=来訪者数となりわかり易い。
オンラインとオフライン
どちらが正解というわけではなく、いずれも必要な活動なのである。
むしろ、これだけではデスティネーションマーケティングは完結しないことも忘れてはいけない。認知から来訪に至るまでのプロセスに沿ったオフラインも含めた途切れることのない施策があってこそ、デジタルの施策が生きてくる。デジタルを取り入れる場合に気をつけたいポイントだ。