デスティネーションマーケティングの目的は、国内外の旅行者にその地を知ってもらい、旅先として選択してもらい訪れてもらうことにある。これまでデスティネーション自らが伝えていくことの大切さを述べて来たが、ここでは“誰に伝えるのか”、について考えたい。
私が関わるせとうちDMOで1つの成果が出始めている。DMOが欧米市場にマーケティングを行い造成に至った50を超える旅行商品価格(航空券は除く)の平均が、60万円を超えているのだ。
一般的な外国人旅行者の訪日旅行消費はアジア15万円前後、欧米20万円前後。そんな中にあっては、極めて高単価の商品群が出来つつあると言える。
なぜ、こうした結果が出始めているのか。
地方が観光振興に取り組む理由は、地域経済の活性化に他ならない。
しかしながら、最近はオーバーツーリズムなどの問題が観光振興の“罪“として取り沙汰されることも多い。ある意味当然の結果かもしれない。つまり、今年開催のラグビーW杯や来年の東京OPを通じて、スポーツファンを越えて多くの外国人が日本を知る。そんな中、”Japan”というデスティネーションマーケティングを展開するとどうなるか。もともと知られていない地方よりも、既に圧倒的認知度を持つ東京や京都などに更に多くの外国人が訪れることになる。
改めて日本のデスティネーションマーケティングにおける地方の誘客戦略を考えるべきだ。
その際、重要なことはターゲティングである。
地方に東京や京都などの主要な観光地ほどのキャパシティーはない。宿泊施設や交通機関、観光スポットも数が限られる。そこへ多くの外国人が訪れることになれば、簡単にオバーフローする。
では旅行者の数を求め過ぎず、期待する経済効果を発揮するためには、どうしたらいいのか。
消費単価の高い旅行者を呼び込むことだ。
せとうちDMOではそこを徹底している。主要なターゲット国を英、仏、独、米としているのも高額消費の旅行者が多いからだ。そして高額消費の旅行者が描く“カスタマージャーニー”をもとにした戦術を展開する。旅先の認知経路、検討手段、宿や航空券手配の手段を明らかにしていく。地道な事実の積み上げのもとに打ち手を講ずるのである。
前述の商品造成の結果は、簡単に言えば、“ターゲットとなる旅行者が利用する”旅行会社やツアーオペレーターを見極めアプローチした結果である。
その見極め方やアプローチの仕方にインバウンドマーケティングの要となるポイントがあるのだが、次回以降に改めて紹介していきたい。
今、国全体の訪日外国人の平均消費額は伸び悩んでいる。各地で起こる観光公害の問題も看過できない。対症療法的な応急処置もあっていいが、今一度、ターゲットを明確にし施策を集中していくことで、根本的な解決の糸口が見えてくるのではないだろうか。
少なくとも地方が行うデスティネーションマーケティングには欠かせない視点だと思う。