旅先として認知され、選択され、訪れてもらう。

地方が行う外国人旅行者を対象とした“デスティネーションマーケティング”について、20年地方自治の世界に身を置いた経験と、せとうちDMOなどの地方観光局で思考錯誤する日々のエピソードを交えながら考えていきたい。

何から取り上げていけばよいものか思案していたところ、付き合いのある海外の旅行業界の知り合いから連絡があった。「今、日本の旅行業界で地方が行うプロモーションのあり方について活発な議論が交わされているというのは本当かい?」というものであった。もちろん我々にとっては関心事であったが、海外の旅行業界にどう映るのか。良い機会だと思い、付き合いのある数カ国の関係者に事情を話し意見を聞いてみた。

この議論、まさに世界水準のDMOを知る者達はどう思うのか。
その反応や意見は予想通りではあったが、納得感はそれ以上にあった。

予め断っておくと、私自身はこの議論が出てくることは自然で、むしろ徹底して議論するべきだと思っている。ただ、その論点は、“成果が出るやり方とは何か”である。一例に旅行博をあげたい。私も何度も旅行博に出ているが、出展の理由は簡単である。それまでに関係を築いてきた、もしくは関係構築を狙っているメディアや旅行会社等と会うためである。対象国の関係者とのリレーション構築は不可欠で(この話はデスティネーションマーケティングの根幹であり追々していく)、業界関係者の多くが集まる旅行博は、絶好の機会だ。だから“事前に”アポイントメント”を確定させ、持ち時間の枠を埋めてから会場へ赴く。

ところがBtoB商談期間中のブース全体の様子を見ると、閑散としている場所が見られる。事前アポイントメントが十分に取れずに当日を迎えているのである。こうなると空いた時間に立ち寄るメディアや旅行会社等との偶然に近い出会いに期待するしかなくなる。厳しい評価となっても仕方ない。
こうした話は旅行博に限らない。広告費を旅行雑誌に支払い記事を掲載する。プロモーション動画を配信し認知を獲得する。いずれも有効な方法ではあるが、問題はその中身である。

つまり、“成果”は何か。“成果をあげるやり方”となっているか。
そして、どのように“成果を測っている”のか。

冒頭の質問への海外の反応はこうだった。

  • Japanというデスティネーションはないよ。旅行者は“日本のどこに行くか”を考えている。
  • 日本全体でプロモーションを行う場合、公平性が優先され、それぞれの地域の魅力が十分に説明されなくなるという心配がある。
  • プロダクトは作るがプロモーションはしないとうビジネスはないと思う。マーケットの反応を感じながら地域を磨いていくことが必要なんじゃないかな。
  • こちら(フランス)の旅行者は、まだ知られていない日本の地方を求めているよ。
  • 自分達の地域は自分たちで伝えるのが、一番伝わると思う。

その通りである。
あとは、“成果をあげるやり方”だ。
この連載を通じて考えていきたい。