訪日外国人観光客のうち欧米系では米国が最も多い。人口は3億人を超え、海外旅行をする人は年間7000万人。世界有数のアウトバウンド大国とも言える。米国をターゲットとする地方自治体やDMOは多く、私が関わる地域でも関心はとても高い。

昨年、米国旅行業界の知り合いと米国をターゲットとしたマーケティングについてディスカッションしていた時のことだ。「旅行の目的地として日本の人気はどんどん高まっているよ。でもそれがために地方は苦戦している。」地方とは、東京-大阪間のゴールデンルート以外の地域のことだ。理由をすぐに理解出来なかった上に、ショックだけは大きく受けた。私が関わる瀬戸内などでは、大きな成果を期待し、すでに相当のリソースを掛けて動き始めていたからだ。

その理由はこうだった。

商品造成を行うツアーオペレーターの認識である。

「日本の人気は高い。このため、時間や費用をかけてゴールデンルート以外のルートを新たに開発せずとも十分に売れる。」極めて合理的な理由だ。

2年前に西海岸に拠点を置くツアーオペレーターを訪ねた。「その未開のエリアに他の国には無いような自然や文化財があると言うのなら考えるけど」と言う渋い反応だったことを思い出した。

欧米外国人の訪日者数

欧米外国人の訪日者数は伸び続けている。しかし内訳を見ると、その渋い反応も腑に落ちる。延べ宿泊者数、2017年比の2018年の伸び率だ。

地方において瀬戸内は辛うじて東京、京都、大阪に食らい付いているが、東北、九州は大きく離されている。その傾向は、特に米国が顕著で、全く伸びていないと言っていい。以前にも述べたが、こうした結果は起こるべくして起きている。外国人の多くは、日本といえば、東京、京都を想起する。こうした中にあって「JAPAN」を前面に出したプロモーションを行えば自明のこととなる。

では地方はどうするのか。

自ら発信するしかないのだが、やり方が問題だ。「JAPAN」というプロモーションは潤沢な財源をもとに膨大な量の情報が海外に発信されている。物量で圧倒され到底敵わない。同じ土俵で日本の無認知層から狙っていては、負けは見えている。例に出した米国のツアーオペレーターも全く日本の地方に興味がないわけではない。日本のオーセンティシティに関心を持つ旅行者も多い。つまり、開発コストを嫌っているのだ。地域の魅力を整理し、自分たちの顧客を安心して送ることが出来る宿泊施設を洗い出し、そして安全でスムーズな交通手段を確保する。日本にスタッフのいない彼らにはとても出来ないことだと感じる。地方の勝機はここにある。