インバウンド再開
先日、国内有数の温泉街を訪れた。旅館組合の代表は、国内需要は回復し始めているが今後の展望はインバウンドを抜きに語ることは難しい。「近場の旅行」という新しいマーケットも嬉しいが、国内需要だけでは足りない。ただ、インバウンド獲得に向けた活動再開のタイミングを測りかねていると。
渡航制限解除やそれに続くエアラインの再開。こうした環境が整うタイミングが一つポイントとなる。しかし、そこから動き始めるのでは遅いだろう。
外国人旅行者が宿泊施設や航空券を手配するのは、旅する3ヶ月から6ヶ月前が一般的だ。また旅先を知ってから検討を重ね予約に至るまでにも時間を要する。認知が低い地域では尚更だ。そして、認知が広がり個々の動きが大きく広がるのには、またさらに時間を要する。つまり、これらを積み上げると少なくとも1年以上前から動き始めてようやく翌年の同じ季節に来訪者数の増加が少しずつ見えて来ることになる。デスティネーションマーケティングの目的は一義的には、来訪者数の増加という大きなムーブメントを作ることになる。こうした時間を見込んでおくことが欠かせない。
マーケット調査
私が関わるDMOや自治体では、マーケット調査をよく行う。戦略構築や日々の活動において、根拠(データ)に基づいて行動・判断することが大事だと思うからだ。その例として「Visit はちのへ 」の取組がある。青森県内の8つの市町村をカバーする地域連携タイプだ。DMO登録される以前からの地域商社機能に加え、ツーリズムのマーケティング機能を備える。地域の総合マーケティング組織となっている。担当者の努力も大きいが、安価な調査ツールを用いて内製で実施している。1調査サンプル(10問/一人)120円程度と安価で行え、すべてインターネットで完結する。これまでになくカジュアルに調査が行える利点を生かし、国内外の旅行者へ毎月、簡単なアンケートを継続して行なっている。自ら聞きたいこと、仮設や狙いを持って調査設計を行い実施する。
Visit はちのへの直近の調査結果によれば、英国や台湾では、半年以内に海外旅行を再開したいと答えた人が、一年後のそれを超えいずれも40%前後となっていた。日本人は13%であった。国内旅行需要の回復すらまだ先のように見える中、多くの地域でインバウンド対策のアクセルを踏み込むのに躊躇している。この調査結果だけで全てを判断できるわけではないが、これまでの「インバウンドはまだまだ先」という認識を改めるには十分な結果であった。国内における海外旅行需要の低迷から、海外も同様だと「思い込んでいる」ようでは、出遅れてしまう。海外では今後回復する海外旅行需要に備えて施策を打ち始めた。国内報道や既存のレポートに頼るだけでなく、まずは事実を掴み自ら考えるところから始めたい。