ディスティネーションマーケティングの現場から / Vol.8
露出確保の有効策
文:村木 智宏(株式会社Intheory 代表)
先日、金融機関が中心となって地域旅行会社(DMC)の設置を検討している地方の話を聞いた。ターゲットは欧米豪市場を軸に考えており、すでにマーケティング活動が始まっているとのこと。地方への関心は高まりつつあり、その狙いは戦略的と言える。ただ聞けば、マーケティングの活動と言っても、セールスや商談会への参加などの旅行会社対策(Travel Trade)中心で、メディア対策は行っていないという。商談からツアー等の商品化につなげ、地域サイドの手配機能を担うことで得られる手数料を主な売り上げとする事業計画となっていた。インバウンドにとって主要な観光地、京都や飛騨高山、高野山などのすでに多くの旅行者が訪れる地域であれば、流通部門に特化しても、ビジネスになるかもしれない。しかしながら、地方の多くの地域には、十分な需要が作られておらず、マーケティングの流通部門だけで経営の持続性を担保していくことは難しい。
需要開拓のためのメディア露出は、デスティネーションマーケティングにおいて欠かせない。誰かが、地域の旅行需要を掘り起こしていく必要があり、そのためのメディア対策となる。
昨年、英国のラグジュアリーやライフスタイルを扱うメディア「ARCADIA MAGAZINE」とタイアップして日本の旅の特集号を発刊した。メディアの公式発行部数は17万部であったが、今回は100万部を売り上げている。日本の旅、さらには聞き慣れないものの美しい景色の広がる日本の地方(まだ見ぬ日本)が特集されていることがその理由となっている。
特集された地域側の手応えがあったことも、大きな収穫。世界のトップメディアが、どのように地域を評価し紹介するのか。新たな気付きや可能性を感じられる機会となった。
こうしたメディア露出の獲得は、ある意味、際限のない活動と考えた方が良い。規模や手法の変化はあっても、「やらない」と言う選択肢はないもの。人は“忘れる”動物で、認知は獲得し続けていくしかなく、このためこうした機会を常に作り続けていくことになる。「ARCADIA MAGAZINE」の日本特集は英国でもインパクトを与えたことで、2026年1月末には同様の日本特集が別のメディアからも発刊される。
英国トップメディアの「Wanderlust」だ。「National Geographic Traveller」などの世界のトップ媒体と並ぶ評価を英国で獲得している権威ある媒体。ここでの日本特集は「ARCADIA MAGAZINE」を越えるインパクトが期待できる。
これらのメディアで紹介される地域は新潟や紀伊半島、出雲や山口の長門湯本など。すでにいくつかのメディアで取り上げられる紀伊半島や長門湯本にあっては、DMCによる商品化も進む。需要の高まりと流通の整備が噛み合い始めた結果となる。
デスティネーションマーケティングに欠かせない継続したメディア露出の獲得は、広告に頼らない手法としてのPR(Public Relations)が基本であり、その延長に今回のようなトップ媒体との共同出版という効果的な方法もある。2026年度は英国に加えて、フランスやオーストラリアでも実施を予定しており、日本の多くの地方を紹介していきたい。
(合同会社Tourism Exchange Japan ウェブサイト掲載コラムより転載)
