ディスティネーションマーケティングの現場から / Vol.7
相応しい組織
文:村木 智宏(株式会社Intheory 代表)
出雲市観光協会が観光庁の指定するDMOに登録された。以前から観光協会として活発に活動していた組織ではあったが、それでも解決できない様々な課題に対処するべく、さらなる組織の成長を目指すことになった。課題の一つに、出雲市内における来訪者数の大きな地域格差がある。出雲大社と参道である神門通りに観光客が集中する一方、周辺部に足を伸ばす人は少ない。日本を代表する神社である出雲大社に旅行者が集中する状況は変わるものではないが、佐渡に次いでトキの放鳥が予定されるほどの自然や個性的な宿など、周遊を促す可能性はあるはずだが、そのための有効打が打てない状況が続いている。そこで、プロモーション機能や地域の磨き上げの機能など、こうしたマーケティング機能を高めることを目的にDMO登録を機に組織の見直しに取り掛かっている。
議論の大きなポイントの一つが、出雲の観光振興を担うに相応しい組織像である。マーケティング機能、事業や予算規模、意思決定の仕組み、地域マネジメントの仕組み、ステークホルダーマネジメント、財源確保の仕組み、人材確保、行政との連携のあり方、この辺りが特に重要となる。
地域の観光振興を担うための専門組織が必要なことはグローバルスタンダードだ。観光地経営の特性上、従来のように行政機関が担うには限界がある。マーケティングは専門性が高い上に、理論だけを学んで実践できるものではなく、ましてや成果を上げるほど習熟するには相当の時間を要する。そもそもマーケティングは、試行錯誤やトライアンドエラーの中で、徐々に勝ち筋を見つけ出していくもの。行政にありがちな予算主義とは対極にあると言ってもよいだろう。
また、DMOは地域の観光関連事業者との良好な関係があってこそ成り立つ仕事。日々の情報発信やセールス、FAMトリップの受け入れ、すべて観光関連事業者との連携の中で動くものばかり。こうしたリレーションシップもまた一朝一夕に築けるものではない。
つまり、職員の専門性の向上に重きを置かず単年度予算主義が前提の行政機関との相性は悪く、合理的に考えて、行政から独立した経営を行う観光地のマーケティング専門組織が必要という結論になる。
ここで重要なことは中半端な組織を作らないこと。組織は独立した体を成しているものの、経営の重要なことは行政が握っているようなことになっては、力は発揮されない。財源の多くを自治体が負担。人員も行政からの出向者が多く、事務局長や代表が行政出身者。毎年度の事業方針は行政が示し、DMOを執行機関として扱う。そのようなDMOでは、組織の独立性、自律性は保たれず、責任の所在も曖昧となる。人や組織の成長もないだろう。「素人は戦略を語り、プロは兵站を語る」という言葉があるが、どんなに優れた戦略も、それを担う組織や人材が整っていなければ、十分に機能しないということ。インバウンドのネットワークやDXのソリューションを機能させるには、組織づくりも併せて行うことが重要となる。
(合同会社Tourism Exchange Japan ウェブサイト掲載コラムより転載)
