COLUMN

ディスティネーションマーケティングの現場から / Vol.3

継続したPR予算の確保

文:村木 智宏(株式会社Intheory 代表)

デスティネーションマーケティングにおいては、その性質から民間企業が単独で担うことは少なく、多くの場合、自治体やDMOなどが実施主体となることが多い。自治体においては、地方自治法を根拠に単年度予算主義に立って会計処理されるため、毎年度予算を組む必要があり、一般社団法人の形態であるDMOも同様の場合が多い。つまり毎年編成される予算の組み方が、マーケティングの成否を分けることになる。

観光地づくりにおいて自治体・DMOが担う役割の中心は、本来プロモーションであり、地域の観光需要を高めることを狙いとする。プロモーションにどれだけ予算が確保できるのか。地域の観光地としての成長は、この規模に比例することとなる。

ただ、以前から課題が多いと指摘されることの多かったプロモーション。つまり広告および広告代理店への過度な依存である。プロモーションにおける主な活動は、メディアを通じた消費者への情報伝達であるが、その内訳は広告によるものとパブリシティによるものとに大別される。パブリシティの獲得はPR、すなわちパブリックリレーションの構築に伴って得られるもので、広告のように情報の発信主体が媒体に広告料を支払い露出させるものと根本的に異なる性質を持つ。

デスティネーションマーケティングにおけるプロモーションにおいて、PRの役割は大きく、情報の高い信頼性とローコストという特性は、予算規模が小さいが、これから認知やブランド力を高めようとする地域や団体ほど馴染む。現状、日本国内においては広告依存の歴史が長いことを背景にPRを戦略的に取り入れ予算化している団体は少ないが、改めて戦略的にPRに取り組むことを勧めたい。自治体等が行っているPRを見ると、PRエージェンシーによるプレスリリースが中心で、あらかじめ決められた年間の実施本数を消化していくようなケースも見られるが、本来のPRの動きとは言い難い。PRとは、メディアやライターとのコミュニケーションをとりながら、デスティネーションの魅力やトピックスを相手の希望やタイミングに合わせて伝えていくもので、高度なコミュニケーションスキルと業界でのネットワークを駆使して結果を出していくもの。メディアとのコミュニケーションを取るには、前提となるリレーションシップが必要な場合が多いことや単独のディスティネーションでは、メディアやライターの関心を十分に満たすことが難しい。このため、観光地マーケティングに特化したPR専門会社に委ねることが有効な方法であり、海外政府観光局やDMOの多くがこうした方法を取っている。

プロモーションにおけるPR活動。インハウス・アウトソース、いずれにおいても自治体やDMOにおいては、PRにかかる人件費コストと取材サポートにかかる旅費等の実費コストに関する予算化が欠かせない。また継続した活動のためには、成果を計測するKPIやモニタリングの指標を設け、毎年度行う予算獲得のための財政当局との協議に備えていくことも重要となる。これまで私たちがPRを担ってきた、せとうちDMO、北陸の自治体、高付加価値な観光地づくりのモデル地区となっている紀伊半島や伊勢志摩での取組も、こうした考え方と方法を取り入れてきたことで、大きな成果をあげつつ、継続することができていると言える。

(合同会社Tourism Exchange Japan ウェブサイト掲載コラムより転載)