ディスティネーションマーケティングの現場から / Vol.1
インバウンドマーケティングにおける理論と実践の往復
文:村木 智宏(株式会社Intheory 代表)
地域の観光振興を考える上で、インバウンドが議論の中心になるようになって10年が経過する。東京OP開催決定後から始まった地方創生の柱にもなった。2020年から23年までの約4年間のコロナ禍を経て、今またインバウンドに関する取り組みが各地で進められている。こうした状況の中で、真に必要なインバウンドマーケティングとは何か。とりわけ地方の外国人旅行者の誘致において必要な対策は何かを改めて考えていきたい。
世界には、観光地としてのマーケティングに関するグローバルスタンダードは存在する。各国政府観光局やDMOが実践する取組やその背景にある思想やマインドセットと日本のそれらには乖離がある。そう言うと「日本は日本。同じことをやっていても競争には勝てない。独自のやり方で成果を出す。」といった声が聞こえてくる。しかしながら、何事においても基本となる理論や方法があった上で実践を重ねる中で、応用や独自性が生まれてくるもの。10年の取組の経験から学ぶことはできただろうか。
私が教員を務める大学のMBAでは、「理論と現実の往復運動」を教育方針に掲げる。基本となる理論に基づき仮説や戦略を立て、現実の中で応用しながら実践と検証を重ねる。理論をさらに磨き、より現実世界の中で貢献できるものに仕立てていくというもの。
デスティネーションマーケティングについても同様と言えるが、はたして何が理論で現実はどうなのか。インバウンド獲得に向けてはセオリーを理解することなく、国内旅行者を対象とする活動の延長線上に立ち続けているのではないか。
デスティネーションマーケティングの現場は、こうした課題に向き合う日々といえる。
多くの地域が旅行者の誘致を望むが、その成果を生むに相応しい戦略戦術が必要となるし、財源を確保することも欠かせない。そして、地域の未来に投資するための財源を集めることは、多くのステークホルダーたちの理解と協力が必要であり、さらには、継続的な活動にしていくために相応しい組織や人材も必要となる。
「トラベルジャーナル」(創刊60年の旅行業界誌)で2019年から6年間にわたって続いたコラムは25年3月の休刊に伴い終了したが、デスティネーションマーケティングの現場での活動は続いている。現場で直面する課題やその解決に向けた試行錯誤、理論に基づきつつ現実の中でしか見出せない解決の道筋、日々のエピソードとともに書き留めていくこととしたい。
(合同会社Tourism Exchange Japan ウェブサイト掲載コラムより転載)
